夫が脳梗塞になった話し(3)高次脳機能障害

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脳梗塞って?

脳梗塞とは、脳内の血管の一部が詰まり、その結果、脳の組織の一部が死んでしまう病気です。

私は、医師の説明を聞く前まで、
「詰まりが取れて、また血液が流れれば、リハビリで元にもどるのかな」と
勝手に思い込んでいました。
障害が出てしまった機能がリハビリで回復する、というのはそういうことだと思っていたのです。

しかし、それはとんでもない勘違い、思い込みでした。

担当医師の説明によると、
血液が届かなかったために死んでしまった組織は、

生き返ることは無いそうです。

そして、医師の説明はここまででした。


では、脳梗塞が原因で発症前とは違う状態になってしまった場合、
それは元には戻らないのか?というと

そうとも限らない、という事例もたくさんあるのです。


「死んでしまった組織は元に戻りませんよ」と言われたからといって

すべてが元に戻らないかというと、そうでもないらしい、

今回はそんなことについて書いてみたいと思います。

なお、脳梗塞の後遺症というのは
本当に個人差が大きいそうで、

Aさんがこうだったから、うちもこうなるのね、みたいにはならないので、

ここで書いたこともあくまでほんの一例として、
参考にしていただければ幸いです

高次脳機能障害とは

うちの夫の場合、

救急車で運ばれた時は、
・自分で歩けない
・目をつぶって自分の鼻を指さしできない

というのが主な症状でした。

幸い、その他には特に重い症状もなく、
救急車を待つ間も座っていられましたし、
けっこうしゃべっていたので、
「救急車呼んじゃって本当に良かったのかしら」と思うほどでした。

ところが、病院に運ばれ、一連の検査を終えて言われたのが、
「脳梗塞です。まだしばらく様子を見ないと、症状が悪化するかもしれません」とのこと。

そして、入院病棟の病室に入ったところで様子を見に行ったら、

本人から
「字が書けなくなってる。自分の名前も住所も書けなかった。」
と言われたのでした。

手が動かないわけでもなく、
ペンがにぎれないわけでもありません。

でも、なぜか、字が書けない。

幸い、入院直後より症状が悪化することはなく、
数日後にはリハビリを始め、
すぐに歩けるようになりましたし、
指の動きにも問題はありませんでした。

スマホのフリック入力がしんどい、と言っていましたが、
やりにくいながらも入力はできるようになったし、
Lightningケーブルの抜き差しもちゃんとやっていたので、
指先の運動機能の問題ではありませんでした。

また、字に対する認識もきちんとしており、
キーボードのタイピングだったら問題は無いのです。

ペンを持って、手書きをする、
それだけができない。

ちょっとイメージしにくい症状です。

ですが、知人の話を聞いたり、ネットで調べたりして、
こういった症状が「高次脳機能障害」にあたる、ということがわかりました。


「高次脳機能障害」とは、

脳の損傷によって起こされる様々な神経心理学的障害のことで、
脳の損傷部位により、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害等が含まれます。

[参考]
Wikipedia
高次脳機能障害
https://ja.wikipedia.org/wiki/高次脳機能障害

「字が書けない」のは言語障害に相当しますが、
夫の場合は、意図した文字が書けない「失書」に当たると思われます。
誤った文字を書いてしまうのは「錯書」というそうです。


脳の損傷が原因で障害が起こり、
その損傷が元に戻ることがないのであれば、
その障害も治らないんだろうか?

でも、ヒデキだって随分とリハビリで回復したというし、
うちの主人だって練習したら書けるようになるのでは?
でも、もし物理的に無理なことであれば、ムリして練習したりしない方がいいんじゃないか?
何を根拠に判断したらいいのか、難しいところです。

こんな本が参考になりました

そんなとき、知人が紹介してくれたのが、この本でした。

「脳は回復する」- 高次脳機能障害からの脱出
鈴木大介


この本を読むことで、まず、
「高次脳機能障害」とはどういうことなのか、
について、段々とわかってきました。

ある一部分のことが、ピンポイントでできなくなる…
例えば、鈴木氏は、電話で約束した仕事の日にちを
正確にメモすることができなくなっていたそうです。
それは、メモができなかったのではなく、
正しくメモしたつもりが、それも、聞き取った直後に瞬間的にメモしたはずのものが、
後から確認したら、間違っていた、それも複数回起こっていた、というのです。


忘れるわけでもないし、
日付が理解できないわけでもない。
うん、この日、って納得して、そして書いたものが全然違う日付だった…

この出来事を読んで、
「ああ、高次脳機能障害ってこういうことなのか」と
うすぼんやりながら、わかってきたのです。

これは、とっても困ってしまう障害です。
すぐに生きていけなくなるわけじゃないけど、
仕事上はかなり深刻な障害ですし、
他の人には非常に理解しにくい症状です。
また、自分自身でも気が付かない、ということもあり得ます。

うちの主人も、どこも悪いところが無いように見えるし、
タイピングもフリック入力もできるのだから、
問題無いだろう、と思っていたのですが、

手書きの文字だけが書けないというのです。

たまたま、手書きで伝票を書かなければならない仕事ではなかったので
事なきを得ていますが、

職業によっては、大変なことだと思います。

「あとがき」から読むのがおすすめ

筆者の鈴木氏は、貧困問題を扱っているルポライターさんです。
現場の実情を固定観念なしに客観的に取材、論理的に分析されている記事には貴重なものが多いと思われますので、チェックしておいて損はありません。

今ではすっかり回復されて、こちらのページでも鈴木氏の数多くのルポを読むことができます。

東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/list/author/鈴木_大介

で、その鈴木大介氏ですが、40代で脳梗塞を発症し、
様々な障害を抱えることになりました。

著書の冒頭でも説明されていますが、
発症直後は、主に視線、涙(感情)、言葉のコントロールが効かなくなっていたそうです。

その様子は本の最初から綴られていますが、
これがどうなっていくのか、がわからないまま読み進めるのはちょっとヘビーなので、

特に患者ご本人が読む場合は、
鈴木氏がかなり良くなられたことがわかる「あとがき」から読むのをお勧めします。

「あとがき」には患者であった鈴木氏の夫人の言葉も綴られています。

それによると、発病から2年余りの時点で、鈴木氏の快復率は病前の95%ぐらいとのこと。
そして、今になって思えば「お医者さんに嘘をつかれた!」というのが、率直な感想でもある、と。

どういうことかというと、彼女が医師から説明を受けたのは一回のみで、
一方的に「脳梗塞後の障害は半年までは回復するが、その後は回復しない」
と言われておしまい、というものだったそうです。

身体の障害と高次脳機能障害の回復に差があることなどの説明も受けず、
「うそじゃん、回復するじゃん!」そう思っても仕方がないと思う、と。

私はこの「あとがき」を読んで救われた気分になりました。

うちも、医師の説明は「脳の壊死した部分は元に戻りません」と言われただけで、
リハビリで治るものがあるのかどうかについては何の説明もありませんでした。

もちろん、不明なこと、不確かなことを言うわけにいかない、
という側面があるのでしょうが、
それにしても患者の家族にとっては
「もう治らないの?」
「じゃあどうしたらいいの?」
という不安が募るばかりです。

でも、医師に対しこれ以上追求しても、きっと返答は同じだろう、と思いました。

それよりも、この本をよく読んだ方が実生活の役に立ちそうです。
そこで、「あとがき」を読み、著者が十分に回復されたことを確認した上で、
再び最初から熟読することにしました。

「脳は回復する」から学んだこと

いろんな事例は調べる価値がある

まず、いろんな事例について調べ、類似の症状が回復した例があるのであれば、
あきらめる必要は」ない、ということがわかりました。

鈴木氏の事例は、かなり深刻なものだったと思いますが、
それでも3年未満で90%以上回復しているのです。

さらに、脳梗塞リハビリセンターのサイトを見ますと、
7年前に発症し、構音障害があった方が、同センターの言語リハビリを受けて、
発音が良くなり、ご自分でも話しやすくなった事例などが載っています。

自分や家族の症状が、こういった改善例の症状に似ていれば、
あきらめる必要はない、ということですよね。

時間がかかるかも、という覚悟は必要

なお、あきらめる必要は無い、ということがわかっても、
かなりの時間がかかることは覚悟した方がいいようです。

鈴木氏も、著書の第六章の「伴奏者ガイド」で
「復帰の前に休ませる」必要性を強調しています。

退院してからしばらくすると、
もう健康体にすっかり戻ったように見えるのですが、
実は脳内のことなので、周りの者にはあんまりわからないんですね。

発症後は、簡単なことを考えるのにも情報が迂回してぐるぐる回るため、
何をやっても疲れやすくなるとか、
そこでムリをすると、うつ病などの二次障害を起こす可能性があるなど、
十分なケアの必要があるとのこと。

治る、という希望は持ちつつも
いつ治るかはわからない、当分の間は今のまま、という前提でいなければ、

というのが現実的な選択かもしれません。

例えば、今の状況だと通勤はムリだと思ったら、
当分は無理だ、その状態を前提に経済的な問題は解決しなければ、ということですね。

本人も、パートナーもなかなか受け入れがたいものもあるかもしれません。

でも、それは、それこそ時間をかけて、現状を受け入れていくしかないのだと思います。


ちなみに、主人の「書く力」は大分回復しました。
宅急便の受け取りのサインもできるようになった、と。

現在、退院後2ヶ月目ですが、書類の記入もできるようになっています。

実は、私もついつい「書く練習したら?」と
せかしてしまったことがあったんですが、
うまく対処してくれて、回復に向かう結果となり、本当によかったと思います。

また、後からわかったのですが、
退院後に病院が紹介してくれたリハビリセンターでは
漢字練習用のノートが準備されており、
文学作品などの文章が薄い字で書かれていて、
それを上からなぞって練習したら、大分書けるようになったと言っていました。

ひょっとしたら、まだ思うようにいかないことが結構あるかもしれないけど、
静かに、長い目であきらめず見守っていこうと思っています。

そんな気分に落ち着くことができたのもこの本のおかげです。

鈴木大介氏のルポは、貧困をテーマにしているものが多いですが、
左翼感情的なものではなく、客観的に原因と結果の因果関係を分析していくもので、
説得力があり、なるほどなあ、と思わされるものが多いと思います。

この本以外の著作も是非。


※参考サイト

国立循環器病研究センター
[103]脳梗塞が起こったら
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph103.html

脳梗塞リハビリセンター
https://noureha.com

★ブログ管理人プロフィール★

1962年早生まれ。典型的な昭和世代の青春時代を過ごし、思い出を発掘している50代。
バブル時代をクソまじめに過ごしたにも関わらず、
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